株主優待の基礎知識

長期安定の株主優待の3つの条件

株主優待は企業の株式を権利付き最終日の時点で保有している株主に配布される特典の事です。あまり株式に興味がない人でも銀行預金から株式に変えるだけで、株主優待として割引券や商品や金券が貰えるという事で興味を持つ方は多いです。

しかし株主優待は一度設定したらずっと続けないいけないとか、何年は維持しないといけないという規則はありません。つまりいつでも好きな時に企業の都合で株主優待が廃止になったり、廃止にならなくても優待の改悪が行われる可能性があります。

最近では株主優待をメインに個人投資家として市場に参加する人も多いので、廃止や改悪で大きく株価が暴落するケースも多いです。株主優待を目当てに大事な銀行預金を株式に変えたのに、優待の廃止や改悪で優待ではもとが取れないほどの含み損を抱えては、せっかく投資を始めた意味がありません。

株主優待の廃止や改悪は完璧に回避できるリスクではありませんが、少しでもリスクを減らせるように廃止や改悪のリスクが低い優待銘柄の条件を紹介します。

株主優待が自社製品やサービスである

株主優待は自社の製品やサービスの無料や割引で使えるものであったり、優待を出している企業やグループ企業の製品やサービスとは関係ないものを優待で提供している場合があります。

結論から言うと自社またはグループ企業の製品をサービスを優待に設定している企業の方が優待の廃止や改悪のリスクが低いです。逆に自社の製品やサービスと関係ない、金券などのを優待に設定している企業の方が廃止や改悪のリスクが高いです。

優待による実質的な負担が大きい

株主優待を出している時点で多かれ少なかれ企業側の負担がありますが、優待の種類によって負担が違います。

例えば1万円分の自社店舗でのクーポンを出している飲食チェーンのA社と1万円分の金券を出している飲食チェーンでは同じように1万円分の優待を出していますが、企業が実際に負っている負担を考えると以下のようになります。

A社 1万円分の食事やドリンクの原価である2000円が負担になる。

B社 1万円分の金券を購入して1万円が負担になる。

企業ごとに製品やサービスの売上原価は企業によって違うので、必ずしも全ての企業の製品やサービスの原価は同じではないですが、どの企業でも自社の製品ならば原価分だけの負担で済みます。

同じ額面の優待を出していても額面が小さくなれば優待利回りの割に企業の負担が減るので、額面の金額をそのまま負担しないといけない企業よりも優待廃止や改悪のリスクが低いと言えます。

優待が集客や宣伝になる

自社の製品やサービスと関係ない金券などを配布していると、優待を使うついでに自社サービスを優待を超える金額で利用してもらえるような事はあまりないです。しかも自社の製品やサービスを使ってもらうわけではないので、宣伝になる事もないです。

逆に自社製品やサービスを優待に設定していると、優待があるから来店してくれて優待を超える金額の商品を購入してくれる可能性があります。さらに優待がある事を理由に今まで製品やサービスを使ってもらう事で、宣伝になってリピートを狙えます。

企業として資金調達策の為でだけでなく、宣言効果や集客効果も狙える自社製品の株主優待は、自社製品ではない優待よりも経営陣が廃止や改悪を考えにくいと推測できます。

業績面に問題が起きていない

企業が株主優待の廃止や改悪を検討するのは業績が悪化している時です。大幅減益によって優待を維持すると純利益の額を超えて還元する事になって、会社から資産が流出するような状況になったり、利益が会社に残らない状態になると株主優待の改悪や廃止に繋がりやすいです。

大幅な減益が発生していないか??

まずは業績を確認して大幅な減益や小幅であっても継続して減益していないかを確認する必要があります。業績悪化さえしなければ優待が維持される保証はありませんが、業績悪化を契機に改悪や廃止する企業が多いので、業績が安定しているかは必ず確認しないといけません。

一度買って保有している優待銘柄も業績の推移は確認しながら、もし優待の改悪や廃止の可能性が高いと判断したら売却する洗濯も必要です。

過去の優待の履歴を確認

業績悪化が株主優待の廃止や改悪に繋がるとしても、企業によって方針はそれぞれ違って少しでも業績が悪化すると配当や優待を廃止や改悪する企業もあれば、少々の業績悪化では変更せずに維持する企業もあります。なかには債務超過の危機に陥って増資が必要な状況になっても、株主優待だけは維持する企業も存在します。

投資判断をする時に大切なのは、その企業が株主優待をどのように扱ってるかを知る事です。中期経営計画や決算説明資料の中で株主還元について具体的に言及している場合があるので、まずは中期経営計画や決算説明資料を確認しましょう。

中期経営計画や決算説明資料に具体的な方針が記載されていない場合は、過去の業績と優待の関係を遡ってみると良いです。業績は過去の決算短信や有価証券報告書で確認して、優待内容の変更は企業のIR情報で確認すると良いです。

ここで赤字転落や大幅減益時の優待の取り扱いを確認する事で、経営陣がどのタイミングで優待内容の改悪、廃止を考えるのかおおよそ掴む事ができます。とは言えケースバイケースで経営判断は行われるので、過去そうだったから将来も同じとは限りませんし、経営陣が当時と変わっている可能性もあります。そのため傾向が把握できても過度な信頼は禁物で、参考として投資の判断材料にするべきです。

財務状況が健全である事

株主優待を出すにしてもその原資になるものがなければ、優待を維持する事も難しいです。どうしても財務状況が棒弱な企業というのは、優待を出していても少し状況が悪くなるとキャッシュフローが回らなくなったり、債務超過の危機に陥って優待を廃止や改悪に走る可能性が高いので、業績と併せて財務状態も確認しておくべきです。

自己資本比率を確認

まずは自己資本比率を確認します。これは総資本に対して自己資本がどれだけあるかというものですが、もし自己資本比率が0%を下回ると債務超過を意味します。債務超過になると解消できなければ、上場廃止にもなるので企業は解消する為の施策を打ってきます。

債務超過を解消しにいく中で一旦配当や優待を廃止する企業も多いので、自己資本比率を確認して最低でも20%以上できれば40%以上あると良いでしょう。

フリーキャッシュフローを確認

自己資本というのは単に余ったお金という事ではなく、あくまでも純資産であるので営業活動に必要なビルや工場や設備の場合もあります。当然ですがこれを簡単に現金化して株主還元に充てる事はできません。純利益に関しても利益が出ているから必ず今期中に現金が入るとは限りません。

実際に現金がどれだけ入ってきているかを確認するにはキャッシュフロー計算書を確認します。

(営業活動によるキャッシュフロー) - (投資活動によるキャッシュフロー)=(フリーキャッシュフロー)となります。

このフリーキャッシュフローは株主還元にも設備投資にも自由に使えるものなので、多いほど株主還元に使える余力も大きいと言えるのです。

まとめ

・株主優待の内容が自社製品やサービス

・赤字や大幅な減益の可能性が低い銘柄

・自己資本比率やフリーキャッシュが切迫していない

必ずしもこの3つの条件を満たしている優待銘柄というわけではありませんが、優待の廃止や改悪のリスクが低い銘柄を選ぶのに重要なポイントという事で覚えておくと良いでしょう。

一番いいのは成長性が高くて財務体質も健全な配当銘柄への投資ですが、好条件の高配当銘柄は株価が高い水準になっている事が多いので、監視銘柄としてマークしながら一時的に相場が落ちるタイミングに買い進めると良いです。

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