今回はフリマアプリやスマホ決済サービスを運営しているメルカリ(4285)の業績や今後の株価について解説していこうと思います。
目次
メルカリの会社概要
社名・証券コード | 株式会社メルカリ(4385) |
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本社所在地 | 東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ森タワー |
代表 | 山田進太郎(代表取締役CEO) |
従業員数 | 連結1827人 (2019年12月時点) |
主要株主 | 山田進太郎 24.1% MSIPクラウドセキュリティーズ 7.6%
富島寛 6.2% ユナイテッド 5.5% |
メルカリ株価・業績
(百万円)
売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | |
連結16年6月 | 12,256 | -42 | -97 | -348 |
連結17年6月 | 22,071 | -2,775 | -2,779 | -4,207 |
連結18年6月 | 35,765 | -4.422 | -4741 | -7,041 |
連結19年6月 | 51,683 | -12,149 | -12,171 | -13,764 |
1株あたりの純利益 | 1株あたりの配当 | |
連結16年6月 | -3.2円 | 0 |
連結17年6月 | -36.7円 | 0 |
連結18年6月 | -60.6円 | 0 |
連結19年6月 | -95円 | 0 |
メルカリは2018年6月に新規上場して同じ月に上場来差高値6000円に一時的ながら到達しました。その後徐々に株価は下落していき、上場から1年以上経過する頃には2000円台に完全に定着しています。
上場した頃は日本で唯一のユニコーン企業と期待されながらも新規上場直後と比べて時価総額が3分の1近くまで落ちている背景には、赤字の拡大と海外事業の失敗が悲観されている事が挙げられます。
売上高はここ数年は毎年40%から80%ほどの急激な伸びを見せていると同時に本業の収益を示す営業利益に関しては赤字になっています。特に心配されるのはこの営業赤字のマイナスが毎年2倍から3倍と凄い勢いで増え続けている事です。
売上高がしっかり伸びているにも関わらずそれ以上の勢いで営業利益の赤字が拡大している理由は、販管費が売り上げの伸び以上に増えているからです。経営陣としては今は投資フェーズでユーザーの確保を優先する方針で、利益を求めるフェーズではないとの事です。しかし資金を預けている株主としては心配になるところです。
そこで財務状況的にメルカリは大丈夫なのかとユーザーは実際に増えているのかも合わせて見ていこうと思います。
メルカリの財務状態
(百万円)
総資産 | 186,275 |
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自己資本・自己資本比率 | 40,525 (21.8%) |
資本金 | 41,146 |
利益剰余金 | -42,196 |
有利子負債 | 52,009 |
総資本が1862億7千5百万円に対して自己資本が4百億円ほどです。純利益のマイナスが最高額になっているのは、直近の19年6月期決算で130億円を超えてきています。しかもこの最終益のマイナスは営業赤字とともに毎年増大していて、どんどん増えています。もしこのペースで赤字を拡大させていけば、債務超過に陥るので事業を継続できなくなるか増資などで自己資本の比率を上げて対処する事になるでしょう。
いずれにしても投資フェーズだからと言って、このまま赤字を増大させ続けていられるような状態ではないと思われます。
メルカリの赤字の縮小とユーザー増加
これからメルカリに投資をしようかと考えている人にとって一番気になるのは、今後メルカリの赤字は縮小していくのか??さらに現在のように会社の資産を減らしながら続けている投資フェーズは実際にシェア拡大に繋がっているのか??という点について見ていきます。
メルカリの赤字はコントロール可能な赤字
メルカリの決算説明資料を見ていくとメルカリの事業のうち会社全体の赤字に繋がっている事業はスマートフォン決算のメルペイ事業と米国でのメルカリ事業です。メルペイ事業は国内でのメルカリ事業と比べて完全な投資フェーズの段階が続いていて、広告宣伝費等が先行して赤字を出していました。同様に米国でのメルカリ事業も先行投資をしている段階で利益を生める状況ではありませでした。
メルペイ
Q7. メルペイの今期の投資(赤字)規模のイメージは?
A7. 具体的な投資(赤字)規模は非開示だが、メルペイの一番大きな投資はユーザ獲得にかかる広
告宣伝費であり、費用対効果を見ながら投資を継続する。また、メルペイの競合他社との差別
化要因はメルカリの存在であり、そことのとのシナジーにあると考えており、まずはシナジー
効果を出すことに重点を置きながら出してから、最終的に単独でも収益化を目指していきたい。メルカリUS
Q8.米国事業について2Qも一定の規律を維持出来ているか?また米国事業の撤退の可能性にど
のように考えているか?
A8.これまで一定の投資規律のもと事業を進めてきたが、2Qにおいてはクリスマスシーズン以
降、認知度拡大に向けてマーケ投資を加速しており、3Qも引き続き投資を行う予定。ただし、
認知をとる広告が即座にGMVに効いてくるとは考えていない。今後の方針については
FY2020.6のの結果を勘案した上で、FY2021.6以降も投資するに値する事業なのかを今後説明
させていただく。
出典:メルカリ FY2020.6 2Q 決算説明資料 質疑応答の要約
赤字の主な原因となっているメルペイとメルカリUSに関しては今後もしばらくは先行投資を続けていくようです。ただ決算説明でも効果対費用もしっかり見極めてという事なので、徐々に国内のメルカリ事業のように投資コストが下がって利益が出る流れになる可能性は充分あると思います。
メルペイに関してはメルカリとのシナジー効果を狙って、メルペイでの投資によってユーザーを増してメルカリのユーザーや取引高を上げていくのを目的としています。メルカリUSも取引高(GMV)の向上を目的に先行投資をしていくが、すぐに取引高に効いてくるとは考えていないとの事です。つまりアメリカでのメルカリ事業に関してもすぐに利益を出すフェーズに以降ではなく、長期的にスパンで利益かも目指す方針と考えて良いと思います。
決算説明でもあくまでもシェア拡大のための広告費が赤字を作っているという事を述べていて、「いますぐ危機的なものではないと思っている」というコメントもありました。
メルカリとメルカリUSの広告費は経営陣の判断で素早く減らす事もできるので、いざとなればコントロールできるコストでもあります。そう考えるとただ赤字を垂れ流し続けて債務超過に陥るようなところまでいく可能性はそれほど高くないのではないか??と思っています。ただメルカリが増資をして外部からの資本を受け入れてまで事業の投資を続ければ、当然既存の株主には増資のリスクが付き纏うので今後の動向には注目です。
メルカリのユーザーと取引高は増えているのか??
メルカリの株主に既になられている方の中にも資本を削りながらも使った投資費用に対して効果が出ていれば、納得できるという人も多いと思います。となるとシナジー効果を起こしたいと言っているメルペイへの投資がメルカリのユーザー増や取引高増に繋がっているのか確認していきます。
メルカリ事業(JP)取引高とユーザー数推移
出典:メルカリ FY2020.6 2Q 決算説明資料
青い縦軸は取引高で赤いグラフはユーザー数です。2020年の2Qこそ出品者への還元キャンペーンも行っていたので大きな伸びを見せていますが、2019年6月期1Qあたりから取引高の成長率が鈍化しているように見えます。
2019年のメルペイは様々な還元策を行った事で、コスト負担が大きくなりました。しかし2019年の取引高の増加だけを見るとシナジー効果を起こしてメルカリの取引を活発にするという目的は果たせていないと言われても仕方がないと思います。それでもユーザー数の増加は続いているので、今後これが利益に繋がるかを注視していかないといけません。
メルカリUS 取引高とユーザー数推移
米国でのメルカリ事業は投資が先行して利益を回収できていないと言っても、取引高自体は順調に伸びていっています。しかしメルカリUSの月間取引高の目標である100Mを今期中に達成するのは難しい状態です。2020年6月期2Qの取引高は127Mに到達しましたが、あくまでこれは3か月の取引高です。1か月で100Mという事は目標値は現在の倍以上になります。
この1か月100Mという数字はすぐには達成できそうもありませんが、成長率の鈍化がなければ2年後3年後に達成できない事もないと思います。ただし成長率を維持するというのが難しいので、メルカリUS事業の経過も今後見守っていくべきだと思われます。
メルカリの株主還元はどうなのか??
昨今では株主優待が魅力的な企業や高配当銘柄に注目が集まっていますが、メルカリの株主還元はどうなっているのでしょう??
結論を言うとメルカリは上場以来ずっと無配です。株主優待に関しても上場以来一度も出していません。
当社グループは、財務体質の強化および競争力の確保同様、株主のみなさまに対する利益還元を経営の重要課題と認識しております。現在、当社グループは成長過程にあるため、事業の拡大と効率化にともなう中長期的な企業価値の向上が株主のみなさまに対する最大の利益還元につながると考えており、創業以来、配当は実施せず内部留保の充実をおこなってまいりました。今後も、当面の間は内部留保の充実を図る方針ですが、将来的には、各事業年度の経営成績を勘案しながら株主のみなさまへの利益還元を検討してまいります。
出典:メルカリIR 株式情報 株主還元
上記にあるように今は会社全体が成長段階にあって、事業への投資や経営基盤強化の為の内部留保の充実を優先するとの事です。しかし将来的には株主還元を検討しているとの事なので、展開する事業から利益がある程度取れるフェーズになる頃に配当や株主優待が期待できるかもしれません。
メルカリの場合は一般の消費者に対する事業を行っているので、株主優待を実施する事で顧客の獲得に繋がる優待を用意しやすいと思われます。他の企業がやっているようなメルカリでの割引券やクーポンなどの株主優待を将来期待できるかもしれません。
メルカリ株のまとめ
メルカリ(4285)の特徴(2020年4月時点)
・事業を成長させる投資フェーズにある
・事業投資が先行して赤字が拡大している
・売上高は高い伸び率を維持している
・投資フェーズで事業投資と内部留保が優先で配当と株主優待はない
メルカリの今後注目していくポイント
・メルカリJP事業の取引高の伸び
・メルカリUS事業の取引高の伸び(目標月間100ミリオンドル)
・メルカリ(JP、US)の広告費が縮小した後の取引高の推移
国内ではメルペイ事業にも力をいれていますがあくまでもメルカリが柱で、メルペイにはメルカリのユーザーと取引高を引き上げるシナジー効果が期待されています。さらに米国でのメルカリ事業も積極投資で成長させようとしています。その為今後この二つの主力事業が伸びていくか四半期ごとの決算で確認していくべきです。
さらに気になるのが広告費などを縮小した後のユーザーの反応です。過去にもコストのかかる還元策を初期に連発してシェア獲得を目指したものの、還元がなくなった途端にユーザーに使われなくなったサービスは多数存在します。
メルカリも多額のコストをかける投資フェーズからいつかは抜け出さなくてはなりませんが、多額のコストがかかる還元策や広告宣伝を縮小した瞬間からユーザーの利用が激減する可能性も否定しきれません。長期に渡ってメルカリに投資をしようと考えている人はこの点にも注意して今後のメルカリに注目しましょう。