ペッパーフードサービスはいきなりステーキやペッパーランチを運営する企業です。この企業が運営する飲食店の中でもいきなりステーキはここ数年かなり注目されて、メディアにも頻繁に取り上げられました。
いきなりステーキの流行とともにペッパーフードサービスの株価も上がり続けていましたが、ここに来て財務状態が急激に悪化して株価が急激に下落しています。
ペッパーフードサービスの最近の業績と財務状況と今後について書いていこうと思います。
目次
ペッパーフードサービスの概要
社名・証券コード | ペッパーフードサービス(3053) |
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本社所在地 | 東京都墨田区大平4-1-3 |
代表 | 一瀬邦夫代表取締役社長CEO |
従業員数 | 947名 |
主要株主 | 一ノ瀬邦夫(17.1%)SFOODS(11.6%)
一瀬健作(2.5%)(有)ケー・アイ(2.3%) |
ペッパーフードサービスの株価・業績
(百万円)
売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | |
16年12月期 | 22,333 | 958 | 973 | 572 |
17年12月期 | 36,229 | 2,298 | 2,322 | 1,332 |
18年12月期 | 63,509 | 3,863 | 3,876 | -121 |
19年12月期 | 67,513 | -71 | -34 | -2,707 |
(円)
1株あたりの純利益 | 1株あたりの配当 | |
16年12月期 | 29.3円 | 10円 |
17年12月期 | 66.1円 | 25円 |
18年12月期 | -5.9円 | 30円 |
19年12月期 | ー129.0円 | 15円 |
引用:https://jp.tradingview.com/
飛ぶ鳥を落とす勢いで純利益も16年から17年にかけては2倍以上の伸びを見せましたが、18年には一転して赤字転落となりました。株価も一時7000円台に突入しましたが、2020年には10分の1以下の400円台まで下落しています。
急激に利益が落ち込んだ理由は店舗の急激な拡大です。売上高を見てもらうと分かる通り売上自体は伸び続けています。しかし無理な店舗の急拡大によってコストが増大して、それに見合うほどの売上のアップに繋がりませんでした。その結果が17年12月期の大幅な増収増益から18年12月期の増収大幅減益という結果になったわけです。
ペッパーフードサービスの財務状態
(百万円)
19年12月期時点
総資本 | 23,459 |
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自己資本・自己資本比率 | 459(2.0%) |
資本金 | 1,644 |
利益剰余金 | -2,125 |
有利子負債 | 8,257 |
もともといきなりステーキが絶好調だった時から拡大路線にあった事で、自己資本比率は低めでした。そこに18年12月期からの大幅減益で自己資本比率が2%まで低下しています。自己資本比率がマイナスになれば債務超過に陥って上場廃止の可能性が出てきます。
業績に関係なく自己資本比率が10%を切る状態になると財務状態はかなり悪いと一般的に言われているので、2%という数字はかなり切迫した状態と言えます。まだ業績の方が最低でも黒字は確実という状態ならば、これ以上の自己資本の目減りは防げます。しかしペッパーフードサービスに関しては逆に赤字が急拡大している状態です。
直近の19年12月期で自己資本の5倍となる27億円以上の最終赤字を出しています。当然このままだと20年本決算を迎える前に自己資本を食いつぶしそうな状況なので、ペッパーフードサービスも対策をしています。
1つめは不採算店舗の閉店です。2つめは新株予約権を発行してSMBC日興証券に割り当てる形で資金調達をする事を決めています。資金調達額は69億円を想定しているようですが、株価によって調達できる額は変動するので調達額は変わってくる可能性があります。
ここからこの2つの対策によってペッパーフードサービスは財務状態を健全化して、株価上昇に繋げていけるのかを考えていきます。
ペッパーフードサービスの今後の業績と株価は??
19年12月期には債務超過寸前までに追い込まれたペッパーフードサービスですが、いきなりステーキの不採算店舗の整理と資金調達を発表しました。
これを踏まえて今後ペッパーフードサービスが復活して株価のV字回復があるのか??それとも心配されているように倒産するような事があるのかいくかつの視点で見ていきます。
資金調達による財務の健全化
新株予約権を行使して新たに株式を発行してそれを第三者に割当てる事で、ペッパーフードサービスは会社の推定で69億円ほどの自己資金を得る事ができます。これによって既存の株主の持つ株式は希薄化するので、資産の目減りが起きます。
しかしながら債務超過に陥る寸前である以上はこうした資金調達策は必要な事です。では69億円を調達できれば、とりあえず安心なのかというとそうではないと思います。
19年12月期の本決算時には27億円の赤字から20年12月期には黒字になるという会社予想を出しています。不採算店舗の整理を進めて60店舗ほど整理されてはいるものの、それだけで今期27億円の赤字を一気に挽回できるほどのコストカットの効果があるかは疑問です。
個人的な見解としては上手くいっても20年12月期にすぐに黒字化は難しいのではないかと思います。
いきなりステーキ以外の業態も決して不調ではなく、いきなりステーキに続くペッパーランチは好調です。しかしペッパーフードサービス全体の8割以上の売上がいきなりステーキの業態である以上はいきなりステーキの赤字を他の業態だけで補うのは難しいと言えます。
コロナウィルスの影響で20年12月会社予想を撤回
ペッパーフードサービスは19年12月期本決算で20年12月期の黒字化を会社予想として発表していましたが、業績予想の修正を2020年3月13日に出しました。この業績修正によるとコロナウィルスの影響で、業績が不透明であるため業績予想を取り下げて未定として公表できる段階で改めて公表するとの事です。
公表していた業績をもともと実現できるのかという話はさておき、修正値を公表できない状況となると20年12月期はやはり赤字継続の可能性が高いと思われます。こうなると追加で資金調達ができなければ、心配されているペッパーフードサービスの倒産の可能性もあると思います。
もし増資などで追加の資金調達ができても株式の希薄化が起きてどのみち株主にとっては良い状況ではなさそうです。
コロナウィルスによる業績悪化
財務状態が急激に悪化する中で不採算店舗の整理や資金調達をして債務超過をなんとか回避しようとする中で、コロナウィルスの感染拡大による影響で人が外に出ない事で飲食業界は大打撃を受けています。
ペッパーフードサービスが運営するいきなりステーキはじめその他の業態も営業時間の短縮等はあっても基本的には営業を続けています。ただショッピングセンターなどに出店している店舗も多く、複合施設自体が休業する場合はいきなりステーキやペッパーランチも休業になっています。
それ以上に普段と比べて極端に人が街に出ないので、営業している店舗の売上を大きく落ち込んでいます。ペッパーフードサービスは月次を公開しているので、2020年に入ってからの月次を確認してみます。
前年度月売上割合(%)
1月 | 2月 | 3月 | 1~3月 | |
いきなりステーキ | 78.2 | 67.5 | 54.3 | 66.6 |
ペッパーランチ | 112.0 | 104.1 | 73.1 | 96.4 |
その他レストラン | 100.5 | 98.6 | 65.4 | 88.1 |
1月は別としてコロナウィルスの影響が出始めた2月あたりから全ての業態で明らかな売上減が見て取れます。3月でこれだけの落ち込みと考えると4月以降は休業店舗もありますし、緊急事態宣言でより入客が減って売上が減る可能性が高いと思います。
単純に1月から3月までのそれぞれの前年比売上比率を出して2019年12月期1Qの売上から計算すると以下のようになります。
推定売上高
(百万円)
いきなりステーキ | 10,008 |
---|---|
ペッパーランチ | 1,955 |
その他レストラン | 293 |
合計 | 12,256 |
単純計算なので誤差が出るかもしれませんが、1月から3月の第一四半期は前年と比べるとコロナウィルスの影響もあって3割ほど売上が落ちるのではないかと予想しています。
ちなみに去年の1Q決算時の5億8千5百万円の純利益を出していますが、第2四半期以降は赤字転落しています。ちょうど1年前の1月から3月の時とでは新規出店されている店舗も多い一方で不採算店舗は2019年後半に大幅に閉店となりました。
そのため2020年1月から3月までの営業利益、純利益を予想するのは難しいです。採算の厳しい店舗を閉めて会社全体の営業費用を抑えるという狙いを素直に受け取れば、営業費用は去年よりも削減できているはずです。そうなると売上の減少と比べれば営業利益と純利益はそれほど悪くないのかもしれません。
ただ3月に撤回した2020年12月期会社業績予想では通期では黒字でも上半期の純利益は赤字になる予想になっていました。それを考えると2020年12月期の上半期は店舗の大量閉店に伴う費用などでコスト高が続いている可能性があると思います。
これらを踏まえて個人的にペッパーフードサービスの2020年12月期1Q決算の純利益は引き続き赤字が継続されると思っています。
ペッパーフードサービスまとめ
・財務状況が悪く債務超過の可能性がある
・資金調達をしたがコロナウィルスの影響でまた経営危機
・店舗の一斉整理を乗り切れば黒字化の可能性も高い
新株発行権を行使しての資金調達は実施したものの、財務状態の再建をしている最悪のタイミングでコロナウィルスによる緊急事態宣言が出ました。これによって2020年12月期の上半期だけでなく、下半期の黒字化も難しくなってきました。
あくまで僕の予想になりますが、さらなる増資や場合によっては債務超過に陥る可能性もあるので今は買いではないと僕は判断します。
ただ不採算店舗を整理しきって閉店にかかる費用が重しになる時期を乗り切れれば、再び営業益、純利益ともに黒字化していく可能性は高いのでペッパーフードサービスに投資を検討している人はしばらく動向に注目です。