『内需株』という言葉は株式に関心のある人ならば聞いた事はあると思います。
内需株と言うのは事業の基盤が国内にあって主に国内の需要で収益を上げている企業の銘柄の事を指します。
例を挙げると鉄道会社や電力会社などインフラ系の企業です。サービス系でも国内のみで展開している企業などは内需企業と言えますが、国内展開のみでも外国人観光客からの収益割合が多い企業などは内需株とは少し違うかと思います。
世界全体の状態を考えると大国同士の貿易摩擦などで、海外からの需要がどうなるか分からない状況にある昨今内需株に注目が集まっています。内需株にもメリットとデメリットがあるので、まずは内需株の良い所と悪い所を見ていきましょう。
内需株のメリット
・他国の政策や国家間闘争に巻き込まれにくい
海外への輸出で大きな収益を上げている企業だと為替変動や他国の政策や国家間の争いによって、企業業績が大きく変動してしまいます。急に関税をかけられたり、戦争などでその国からの需要が減ったりと様々なリスクがあります。これらは一企業の力でコントロールできる事ではありませんが、確実に業績に影響してしまうのです。
これと比べると内需株は国内からの需要で収益を上げているので、他国の動きによって受ける影響は輸出などで稼いでいる企業よりも軽微です。
・為替リスクが低い
輸出産業などだと商品の価格を上げていなくても円の価値が上がることで、実質的に商品の価格が上がってしまう事で売れにくくなります。また円高になると日本に来る外国人からしても旅行などのコストが高くなるので、海外からの訪日客が減る傾向があります。
このような為替リスクを受ける産業だと常に為替変動のリスクを負うことになりますが、内需株は主に国内の顧客からの利益がメインなので影響が少ないです。
・内需株は株価に安定感がある銘柄が多い
全ての内需株が当てはまるわけではありませんが、内需株は交通インフラや生活インフラを扱う企業が多いです。その為景気が悪くなっても他の業種と比べて需要が下がりにくい傾向があります。さらに鉄道、電力、水道など参入障壁が高くて簡単にライバルが現れない業種も多いので、業績が急激に悪化するリスクが低いです。
万が一経営業況が悪化しても行っている事業の内容的に廃業されると社会全体に混乱を招く可能性がある業種が多いので、倒産しないように公的な支援が入る事も多くて倒産リスクが低いです。
内需株のデメリット
・限られた市場の中でしか企業活動できない
事業の性質的に国内に基盤を持って国内からの利益だけで成り立っている企業だと国内の限られた需要しか取りこめません。つまり収益の限界がある程度見えてしまうので、時価総額の大きな上昇を期待しにくいです。
・好景気時に他の業種より恩恵を受けにくい
不況時にも強いのが内需株の強みですが、逆に景気に影響されにくい事で好景気時に受ける恩恵が少ない銘柄が多いです。
内需株をおすすめしたい人
・既に大きな資産を持っていて安定した運用をしたい人
内需株は業績や株価が安定している企業が多いので、既に大きな資産を持っていてリスクを負って増やすよりもディフェンシブに着実に利益を得たいという人におすすめです。
大きな資産を投入する時には時価総額が低いと買うのも売るのも出来高が少なくてやりにくいです。しかし内需株には時価総額が大きくて、出来高も多い企業が多数あるので運用資産が大きい人でも取引しやすいです。
・着実にインカムゲインを得たい人
内需株の中には時価総額や利益や純資産が大きい企業が多く存在します。生活インフラや交通インフラなどの銘柄も多く、成長よりも安定して事業を継続をしようとする企業が多いです。
それゆえ会社に残った利益を新しい事業などに積極的に投資する企業よりも株主配当に充てやすいので、配当性向が高い企業が多いです。まとまった資産があってある程度計算できる配当収入を得たいという人におすすめです。
おすすめの内需株5選
内需株と言ってもかなりの銘柄がありますし、それぞれセグメントも異なります。その中で個人的に良いと思った内需株を5つご紹介します。
安定性が高くて長い期間利益を出し続けられると思った企業を選んだので、参考にしてもらえればと思います。今回は時価総額がある程度大きい企業を選んだので、知っている人も多い銘柄になっていると思います。
※必ず利益が出る保証はないので、投資の結果はあくまで自己責任でお願いします。
1.沖縄電力
各地域の電力会社の中でも管轄の人口が少なく、規模としても沖縄電力は小さいです。特に東京電力や関西電力や中部電力など大都市が管轄内にある電力会社と比べると大きな大きな差があります。
その中であえて沖縄電力を選んだ理由は原発リスクがないという事です。
上場している大手電力会社の中でも原発が管轄内にないのは沖縄電力だけで、それ以外の大手電力会社だと一つは管轄内に原発があります。基本的に安全だと言われていても東日本大震災の時のような例があるので、電力会社に投資する投資家にとっては原発リスクは無視できないものです。この原発リスクがないという事は長期投資しやすい好材料と言えるでしょう。
売上規模や利益の規模こそ他の大手電力会社に劣りますが、財務状況や配当性向の高さは他の大手電力会社に劣りません。
2.東海旅客鉄道
JRも大手電力会社と同じく地域によって6社に分かれていて、2019年現在で上場しているのはJR東海、JR東日本、JR西日本、JR九州の4社です。JR東海は管轄の地域の人口や路線の総距離ではJR東日本やJR西日本に負けています。
しかし売上高ではJR東日本に次ぐ2番目で、営業利益に関してはJR東日本を上回っています。東海地方は人口の割に関東や関西と比べて競合する私鉄が少なかったり、東海道新幹線からの収益も大きいためにJR系列の中で一番の営業利益を誇っています。
直近の業績ではリニアの建設費によるコストがあるために減益になっていますが、長期的に考えれば今後も高い収益性と健全な財務状況を維持する可能性が高い銘柄です。
3.日本電信電話
NTTは日本株の時価総額ランキングの上位に常に名を連ねる超大型内需銘柄です。長年日本の大手企業として日本経済を支えてきた企業でもあるので、知名度やブランド力は抜群です。
移動通信事業や地域通信事業(光回線)が主力になっていて、固定電話網も独占しています。業績も安定していて、配当性向も40%前後になっているので長期保有しやすいディフェンシブ銘柄の代表格とも言えます。
4.三菱地所
三菱地所は不動産ディベロッパーの大手で三井物産と並ぶ業界のトップです。東京都の中心部に多数の不動産を所有していて、「丸の内の大家さん」とも呼ばれている企業です。日本は人口減少によって、不動産価格は徐々に下落していくと言われています。
その一方で都市部の地価は上昇していて、特にオフィス需要は高まる一方という状況の中で安定して増収増益を続けています。安定した業績に加えて海外での開発にも積極的で、将来性という点でも期待できる銘柄です。
配当性向は約30%ほどで安定感のある大手企業の中では特別高配当というわけではないですが、決して低い配当ではありません。今後も安定した増収増益と増配を期待して長期保有できる銘柄の一つと言えます。
5.東京建物
三菱地所と同様に東京都を中心に不動産事業を行っている総合不動産企業です。マンションやビルの賃貸から海外のリゾート開発なども手掛けています。今後需要が高まると予想される高齢者向け住宅の賃貸などの事業も行っていて、将来性も感じられる企業です。
業績的には順調に増益していて配当も毎年増配している状況です。それに連動するように株価もゆるやかな上昇トレンドを継続しています。不動産業は業種的に成長性の高いセグメントとして注目されているわけではありませんが、東京建物は三菱地所と同様に長く保有する銘柄として魅力があります。